まず、次の比較を見てほしい
従来、現在の就業規則 判断形成理論を基盤とする就業規則
目的 法令遵守・労基署対応・助成金対応 組織全体の判断基準を統一する
発想 「してはいけない」管理 「どう判断するか」の支援
中心 労働条件 経営・教育・人材育成・リスク管理
管理者 規則を守らせる 判断を育てる
社員 規則を守る人 自ら考え行動する人
評価 結果中心 判断過程も評価
トラブル 起きた後に対応 起きる前に予防
AIとの関係 AIで規程作成 AIと人が共同判断する基準
法的位置付け 労働契約の内容 組織運営の憲法
□従来型就業規則の特徴
助成金や各種給付金では、育児介護休業規程、短時間勤務制度、テレワーク規程、ハラスメント規程、介護休暇制度 など、「制度があること」が重要でした。つまり、制度を作れば要件を満たすという世界でした。就業規則は助成金の「証拠書類」としての役割が大きかったと言えます。近年も助成金では就業規則の整備や届出状況が要件となるものがあります。(厚生労働省)
□これから変わる理由
AI時代になると、制度より「判断」が価値になります。例えば保育園では、同じ「子どもが転倒した」でも、園長、主任、担任、保護者で、それぞれ判断が異なります。
ここを統一するのが、判断形成理論です。
□判断形成理論型就業規則とは、サンプルを見てみましょう
第1章で示すものは、判断形成原則
例えば
①事実を確認する ②法令を確認する ③教育・保育理念を確認する ④子どもの利益を最優先 ⑤保護者との信頼 ⑥組織として判断する ⑦記録する
つまり、判断のアルゴリズムを規則化します。
〇AI時代との親和性
AIは、法令は教えられる。しかし、AIは、園の文化、護者との信頼、地域性、空気までは判断できません。だから、AI+判断形成理論になります。
AIは、法令検索、判例検索、リスク抽出
人は、価値判断、倫理判断、教育判断
これが役割分担になります。
〇人的資本経営との一致
経済産業省が示す人的資本経営では、人材を「コスト」ではなく「資本」として価値を高める経営が求められています。(経済産業省)
判断形成理論は、まさに、人材の判断能力を育てる理論です。したがって、人的資本経営とも非常に親和性があります。
〇例えば、認定こども園では特に有効
例えば、従来、園児を安全に保育することだけでした。これからは、安全とは何か、迷ったら誰に相談するか、保護者対応はどう判断するか、ICTをどう使うか、AIをどこまで利用するか、まで規則に書けます。
〇将来の就業規則の構成案
第1章 総則 目的 適用範囲 職種 役職 役職者の責務 用語の定義 判断形成の原則
第2章 人事 採用 配置 異動 判断基準
第3章 服務 基本行動 判断基準 境界事例
以降すべて、「条文+判断基準+境界事例」で構成する。
〇就業規則は次の3世代へ進化すると考えます。
第1世代(1990~2020年代) 法令遵守型 労働条件管理型
第2世代(2025~2035年) 判断形成型 AI協働型 マネジメント型
第3世代(2035年以降) 組織OS(Operating System)型 AIが法令・判例・リスクを提示し、人間は判断形成理論に基づいて最終決定を行う。就業規則は単なるルール集ではなく、「組織の意思決定基盤」として機能する。
□最後に、社労士業務への展開
「判断形成理論」を就業規則に組み込む取り組みは、従来の社労士業務を次のように発展させる可能性があります。
過去:法令適合性を確認し、助成金や行政対応に耐える規程を整備する。
現在:法令・判例・行政通知に加え、園長や管理職が迷わない判断基準を規程化する。
将来:AIが法令やリスクを提示し、人間は判断形成理論を用いて最終判断を行う「判断支援システム」として就業規則を運用する。
このような就業規則は、労働基準法89条が求める必要記載事項や就業規則の法的効力を土台としつつ、任意記載事項として組織独自の判断原則やマネジメント基準を盛り込むことができます。(スタートアップ労働)
この方向性は、認定こども園や介護事業所のように、現場で日々「正解が一つではない判断」を求められる組織において、大きな実務的価値を持つと考えます。
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2026.07.14
問い AI時代、これまで「法令遵守・助成金対応のための就業規則」と、これからは「経営判断・現場判断を支えるマネジメントシステム」型就業規則へ進化するとは
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